年間来訪人数200人、山の麓にあるシェアハウス「森ハウス」を覗き見!

見ず知らずの他人と一つ屋根の下で暮らし、時には一緒にご飯を食べたり、どこかへ出かけたり、ちょっと特別な日にはパーティーを開いてみたり。人生でシェアハウスに住むという経験をする人は、世の中に一体どのくらいいるのでしょうか?


森ハウスは、鯖江の河和田という小さな集落にある古民家シェアハウス。「この家はどんな場所?」と言われても、2年間住んでいる私でも一言では説明できないというのが正直なところです。



ただ森ハウスの特徴としてあるのが、「オープンで人が流動的」、「何かを強制されるルールが特にない」、「皆、きちんと他人である」ということ。



家としての機能だけではなく、住人も住人じゃない人も行き交う、公園のようなパブリックな場所。

今回は、そんな少し変わった片田舎のシェアハウスの生活を少しだけご紹介していきたいと思います。


森ハウスって一体なんだ?

今回ご紹介する「森ハウス」は、鯖江の河和田の集落にたたずむ3軒のシェアハウス。森ハウス本宅、五兵衛邸、五兵衛邸の離れの洋館と呼ばれる建物に、合計で十数名(ぐらい)の住人が暮らしています。
森ハウス本宅(8部屋くらいある古民家シェアハウス)

五兵衛邸 (本宅の住民が増えた事により、いつの間にか家主が借りていたもうひとつのシェアハウス。敷地内に神社がある。笑)

五兵衛邸の離れ(こちらは厳密にはシェアハウスではないが、住人一人と猫ちゃんずが住んでいる。彼女の作る、庭で摘んだつくしの佃煮が好きだ。)



家の周りは山と田んぼに囲まれており、オシドリや蛍など季節ごとに色々な生き物をみることができる場所。(たまに熊や鹿、イノシシも……)



地区の草刈りに皆で参加したり、町のお祭りのステージで地域の人と一緒にセッションしたり、冬には屋根の上に登って1mくらい積もった雪を下ろしたり。



「THE田舎暮らし」とはおそらくここでの生活を指すのだと思います。
それでは、実際にどんな人が運営していて、どんな人が住んでいるのかについて迫っていきます。


自称明るい家主の森一貴が運営するシェアハウス



シェアハウスには、家主やオーナーと呼ばれる存在がいて、森ハウスでは森一貴という人物が該当します。(以下:森さん)
山形生まれの移住者で、音楽が好きなフリーランス。笑い方は「あっひゃっひゃっひゃ」で、人に対してあまり壁がなく、一言で言えば親しみやすいキャラクターです。



家にいる森さんは、すぐに家で飲み会を始めたがる割には、自分はあっという間に酔っ払って、気がつけば寝ていることがほとんど。

土偶みたいな寝方の森さん。

東大出身で元コンサルのバリキャリなのですが、良くも悪くも共に暮らしていれば、そんな肩書きなどほとんど思い出すことがありません。ただの人間同士なのです。

この家に、ラベリングや肩書きに興味がない人が集うのは、森さんが「そういう」空気感を知らず知らずのうちに作ってるからじゃないかなと感じます。



「肩肘張らずに、そのままであろうよ。」
そんな感じでいつもヘラヘラして、みんなを「管理しない」家主です。


ルールはないけど、自然と調和が生まれている



トラブルが起きないシェアハウスには、必ずといっていいほどルールがあり、住人はそれをしっかりと遵守しているようです。

「ゴミ捨てや掃除は交代制」、「お風呂は●時まで」、「共有スペースに私物を置かない」などなど。ところがこの家はどうでしょう。決まりという決まりがありません。



強いて言うなら、盗み食いされたくないものには、ペンで名前を書くといったことぐらいでしょうか。(それでも食べられちゃうこともある。笑)



「ルールがないなんて、共同生活成り立つの?」と思われそうですが、森ハウスの住人は、「ゴミは捨てたい人(捨てるのが得意な人)が捨てる」し、「掃除したい人(掃除するのが得意な人)がする」し、「そもそも共有スペースという概念が薄い」のです。



ただし、もちろん人に頼りっぱなしは気持ちよくないので、「ゴミ捨ては苦手だけど洗い物しよう」など、それぞれ何かしらでバランスを取っているように感じます。住人間の喧嘩もほぼないに等しいですが、相手に敬意と感謝を持ってこその調和だと思います。(特に、いつもゴミ捨てを頑張ってくれている住人Nには頭が上がらない。)



あらゆる面で皆の許容値の高さを日々感じますが、それ以上に「人を許す許さない」、「怒る怒らない」ではなく、「人に期待しすぎない、求めすぎない」人が集まってくる、もしくはそうなっていく人が多いのかもしれません。そういった積み重ねが、この家のゆるさや寛容さに繋がっているのかなと思います。



そして、だいたいがズボラで大雑把でテキトー。なので、細かいことが気になったり、自分のペースを乱されたくない人、相手の気持ちを過剰に推し量る癖がある人には少々息苦しい空間かもしれません。

それぞれが自分の人生を生きていて、それでいて偶然隣り合わせた同居人との時間を純粋に楽しんでいるような。私個人としては、その空気感に心底安心しています。


森ハウスに住んでる人ってどんな人?



住んでる人と書きましたが、もはや住んでいるのかいないのかわからない人物が多いのが実情。LINEのグループには41人(2021年5月現在)いますが、実際に住んでいるのはそのうち十数名。



年齢層は20代〜40代で、20代後半がボリュームゾーン。福井県出身の住人もいますが、県外からの移住者が多く、もともと福井に縁もゆかりもなかったケースも珍しくありません。

また、2年住んでいる人もいれば、2週間くらいでまた別の場所に行く人もいて、毎日いる人もいれば、たまに帰ってくるという人もいます。

そんな多様な暮らしがある森ハウス。実際に住んでいる人たちについて、タイプ別に簡単にご紹介していきます。


タイプ1:社会人(会社員、個人事業主、フリーター)



森ハウスの半分くらいの人間は、おそらく何かしらの形で働いています。ショップ店員やライター、PM(プロジェクトマネージメント)、デザイナー、メーカー勤務などなど。福井に移住してきてから新しい仕事を始めたメンバーも多く、最近ではフリーランスから公務員になった住人もいます。



でも正直、皆がどういう仕事しているのか具体的なことはあまりわかりません。共通しているのは、地域の中に溶け込みながら、楽しんで仕事をしている人が多いということと、皆程よく働き者だということ。今日も窓越しから「いってらっしゃい」「いってきます」という声が飛び交っています。


タイプ2:大学生


続いて学生。主に大学生ですが、夏休みなどの長期休みや休学中、あるいは、毎年10月に開催される工房一斉開放イベント「RENEW」の時だけ一時的に滞在するケースが多いです。

この家に住んでいると年齢の概念が薄れてくる……というか、単に皆年齢に興味がないだけなのですが、誕生日パーティーなどをした際に、「ところで何歳になったの?」なんて話をしていると、「もう20歳だよ〜〜!」「げ、わか!」みたいな会話になることが多々あります。



また、なぜ学生が流れ込んでくるのかというと、だいたい家主が口説いて連れてくるのです。そしてさらわれてきた学生が、また別のところから人をさらってくるのです。危ない話みたいになってしまった。

休みを捻出して何度も遊びに来てくれる人いて、そこから住人になるというケースもあります。


タイプ3:ニート



「ニート」と聞くとどういう印象を持たれるでしょうか?このまち……とまとめてしまっていいのかは疑問ですが、少なくとも森ハウス近辺にいる人間は、ニートを愛してしまう傾向があります。(私調べ)



なぜなら、「遠慮なく借りていい手があるのなら、ちょっと手伝って欲しい!」というケースが、日常の中では案外多かったりするのです。「重いものを一緒に持ってほしい」、「ちょっとそこまで一緒についてきてほしい」、「簡単な作業を少し引き受けてほしい」、「今日は誰かと一緒にご飯が食べたい」など。



また、基本的に家にいてくれるので、宅配便を受け取ってくれたりするし、そもそも家に必ずいてくれる人がいる状況に安心できるのです。



こたつで寝てる人がいる、ただそこに人がいて暮らしている。そういう光景があって初めて、家が家になっていくのだと思います。


タイプ4:知らない人



もはや住んでいる人ではないのですが、家に帰ると知らない人がリビングに座っている、靴が溢れすぎて玄関の足の踏み場がない、なんてことがザラにあります。新型コロナウイルスが流行する前だと、年間で延べ200人くらい来ていたようです。(家主調べ)



知らない人のガハハという笑い声で溢れるリビング。引っ越してきた当初は、住まいがあまりにも開放されていることに戸惑い、変に緊張してストレスを感じてしまうこともありました。ただ、いつしかそれが自分にとっての日常となっていたようで、住人しかいない日々に少しそわそわしています。(早くコロナが収まりますように。)



人と人が繋がる瞬間に出会える喜びや、偶然性の先には思いがけないワクワクが待っていたりします。友人と友人が知り合うきっかけになったり、来てくれる人が住人と話すことですっきりした顔になると嬉しくなるのです。今この記事を読んでくれている人にも森ハウスに来てほしいので、googlemapで「シェアハウス森邸」と調べて来てみてください。(一応連絡はください。笑)


森ハウスまとめ



河和田のシェアハウスの様子をお伝えしてきましたが、雰囲気だけでも少しは掴んでいただけたでしょうか?



森ハウスのある河和田エリアは、もともと職人の多い「ものづくりの人のまち」。ただ、この家に集まってくるのは、「そこには当てはまらない人、何も関係ない人、"じゃない人"」がほとんどです。



鯖江駅から家までのアクセスは悪いし、周りにあるお店の数もまだまだ少ないです。でも、とりあえず来てみたら何かがある気がするし、実際みずみずしく「生きている」人が結構います。



「とりあえず自分でやってみる」
そんなマインドによって、企画がぽこぽこと生まれることもあります。鍋パなり、カレー作りワークショップだったり、空き家を借りてイベントをやったり……

「○○やるので、興味のある人は〜」という声も住人の間でよくかかります。(もちろん、何もしなくても良いのですが。)



あるとき、とある住人が、
「この家では1日たりとも同じ日がない気がする。だから、毎日が特別で忘れられない。」
と言っていました。

たしかに、非日常と捉えていたものが、ふと新しい日常になることも往々にしてあります。



おそらくこの家では、誰もが羨むようなキラキラとした華々しい生活を送るのも、毎日毎日同じような光景を見続けるのも、どちらも難しいでしょう。



でも、「ただ人がそこにいること」の尊さや、その価値をこの家の生活を通して感じることができます。一人と独りの違いがわかるようになります。



「誰かと暮らすこと」の難しさやありがたさを感じるとともに、日々のコミュニケーションによって、相手を尊重すること、そして自分を大切にすること、人間において必要なことを体感できているような気がします。



今日も住人はそれぞれが一人でいて、それでいてみんな一緒にいる。

そして、誰かの訪れに心を弾ませています。

 

 

Information

  • website:Youtubeチャンネル
    • 名称:シェアハウス森邸(仮名)
    • 住所:〒916-1225 福井県鯖江市別司町25-6-4

     

     

    案内人

    谷垣奈穂
    谷垣奈穂
    TOURISTORE/SAVA!STOREスタッフのかたわら、ライターをしています。鯖江河和田にある古民家シェアハウス「森ハウス」に住み始めて早2年半。他の住人達はだいたい皆声が大きく、声量がない自分はデシベル的に肩身が狭い。人の話をダラダラ聞くのが好きです。

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