敦賀市地域おこし協力隊アテンド!敦賀アーケードツアー(中編)

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●新田珈琲



次にたどり着いたのが、新田珈琲。落ち着いた外観で、「最近できた新しいお店なのかな?」というほどに清潔感があり、ふらりと立ち寄りたくなる雰囲気です。

新田珈琲の前身 であるチモトコーヒーの看板が同じビルに。

でも実際は、福井県で最も歴史のある自家焙煎珈琲の専門店なのだそうで、創業はなんと1940年にまでさかのぼります。当時、福井県ではまだまだコーヒー文化が浸透していない中、コーヒーのほかにチョコレートなどの輸入品を中心に取り扱いされていたのだとか。



さっそく店内に入ってみると、すぐに珈琲の良い香りが鼻元を漂ってきます。奥には焙煎機もあり、遠目で見ても歴史を感じる佇まいです。



そして、こだわりの豆がずらり。ブレンド・シングルを合わせて20種類以上を常に取り揃えているそうです。産地ごとに豆の味の特徴が書かれているので、コーヒー豆初心者さんでも自分の好み合わせて購入できそうです。



コーヒーを入れてくださるのは、新田珈琲店主の新田和雄さんと新田千香子さん。焙煎士でもある和雄さんは、日本のコーヒー資格では最難関の「J.C.Q.A 認定コーヒー鑑定士(認定No.18)」という資格をお持ちだそうで、2019年時点でこの資格を所有している人はたった32人しかいないそうです。

世界中のコーヒー豆に関する知識や、品質管理、コーヒーに関する幅広い知識をもって、「おいしく、安心安全に飲めるコーヒーとは?」を問い続け、納得したものを至高の一杯として提供されています。



また、奥様の千香子さんも美味しいコーヒを追求すべく、日々勉強やコンテストへの参加など様々なチャレンジをされています。たとえば、2018年に行われたコーヒーの味を判別する競技「ジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ 2018」では、なんと日本チャンピオンに輝いたとこのこと。さらに、コーヒーの抽出競技である「ジャパン ハンドドリップ チャンピオンシップ2017/ 2019」では、両年ともに日本第3位という成績を残されたのだそうです。

「ここのコーヒー屋さんの方はただ者ではない」と素人ながらに感じる。

個人的にすごく驚いたのが、千香子さんは新田珈琲に嫁いでくるまでコーヒーに関する知識をお持ちではなかったとのこと。子育てをしつつ、コーヒーに関する勉強を熱心に行われ、結果に結びつけたそうです。

「私、勉強頑張ったの!」と笑顔の千香子さん。

なんと娘さんもコーヒーインストラクターという資格を小学校6年生という早さで取得されたんだとか。

お店の雰囲気の良さだけではなく、「おいしい」を追求し続ける信念と実力。それもあってか新田珈琲には一般のお客さんだけでなく、コーヒー屋を営む経営者の方も足繁く通うそうです。

丁寧にハンドドリップされるコーヒー。

真摯にコーヒーに向き合い、「美味しい一杯」を形にしていく誠実さ。まっすぐになにかと向き合い続けるその姿勢はリスペクトせざるをえません。



お二人の努力や新田珈琲の歴史に感動しつつ、デカフェのアイスコーヒーを注文。カフェインやコーヒーの成分を水中に一旦出し、カフェインを取り除いてから再度コーヒーの香りなどを豆に戻す製法を採用しているそうで、「これは本当にカフェインレスなのか?」と思うほど香りが高く、味わい深い飲みごたえのある一杯でした。

ちなみに、店内に喫茶スペースはありませんが、テイクアウト購入したコーヒーを外のベンチで飲むことができます。

豆もしっかりゲット。



店内では、お手軽なドリップパックも販売されています。バリエーション豊かで、手土産やプレゼントに喜ばれそう……コーヒーをこよなく愛し、自分なりのこだわりを持つコーヒーホリックの人こそ見逃せないお店です。




新田珈琲を出てコーヒーを片手に歩いていると、「TAC どまァに」という、ピンクの象が印象的なクリーニング屋さんが現れました。西山さんの指指す方には、おそらくどまァにのキャラクターであるピンクのぞうさんと、レトロでかわいい時計が。

時計はSEIKOのファンタジアという大型掛時計。「TACどまァに」のTACはチクタクのタックなのか?

注目すべきは、時計が配置されることがあらかじめ想定されていたであろうレイアウト。ここで時計がなくなってしまうと、見栄え的にはなかなか寂しくなってしまいそうです。

しかし、この時計は毎日夜になるとどこかへ姿を消すようなのです。謎を解明するために西山さんが聞き取りを行ったところ、「この時計は店主さんの大事な私物で、本町で酔っ払った人たちに盗まれないようにするために、営業時間外は外すようにしている」とのこと。とってもまっとうな理由でした。笑

おでこに刻まれた煮魚の隠し包丁みたいな×も味な気がしてくる。

普段の暮らしの中で、ここでわざわざ立ち止まる人はおそらく誰もいないでしょう。ただ、このピンクの象や時計も間違いなくこのアーケード街の大切な景色の一部。何気ない場所ですが、「知らず知らずのうちに日常の中に馴染み、まちの風景になっているもの」なのだと思うと愛着が湧いてしまいますね。


●御菓子司 親玉



さて、続いて足を運んだのは御菓子司「親玉」。手作りの和菓子を販売しているお店です。



「ちょっと寄っていきます〜」と軽い足取りでお店の中へ入っていく西山さん。店主さんとも顔なじみのよう。店内にはおそらく店主さんに会いにお店に来ていた女性がいたのですが、「どうぞどうぞ。私はもう用事済んだから。」と開けてくれました。

手書きのメッセージに和みます。しかもとっても達筆。

ショーケースの上には、手作りの大福やお赤飯などが並びます。中でも特におすすめというのが塩大福とのことで、西山さんが「これください〜」と言うと、店主さんが「ああ、ほな持っていき〜」と塩大福とくるみの詰め合わせをひとつ包んでくれました。



ちなみに、お店はほぼ趣味のようなもので、不定休で開いているときと開いていないときがあるとのこと。程よくゆるく、開けた場所がまちにあると安心しますね。

「今度ある市場で出品しようと思っているの」と素敵な古道具をたくさん見せてくれました。

そのまま流れで店主さんによるお話をいろいろ聞きながら、「こういう自分の話を沢山してくれる人がいるお店はなんかいいなあ。」なんて考えていました。お店とは一般的に、店側と客側という線引きがなされるものですが、このお店にはそういった垣根があまりないように感じました。

それはおそらく、肩肘張らずにお店を開くスタンスがゆるさや空白を生み、その空気感に西山さんやその女性のような、まちに住む人達が引き寄せられるのではないかと。

頂いた塩大福とくるみ大福。まるっと、もちっとしたフォルムが愛おしい…。

ご厚意でいただいた大福をありがたくいただきます。

塩大福は塩の加減が抜群に良く、ひとくち食べたら、すぐにもう一口頬張りたくなる中毒性。くるみ大福は黒糖のしっかりとした甘みがあり、香ばしいくるみの香りが余韻をもたらしてくれます。

ごちそうさまでした。



ほくほくとしたき気持ちでお店を出ると、かぐら1丁目商店街に入りました。



奥の細道の旅路で敦賀に立ち寄った松尾芭蕉が詠んだ句が、あちらこちらに散見されます。ちなみにこの句は、「気比の月があまりにも美しいので、八景(ある地域で、特にすぐれた8か所の景色)に加えるべきだ」という気持ちから詠まれたもの。



そして、アーケードのデザインがまたまた変わりました。今度はとんがり屋根のアーケードで、全く雰囲気が違うのが面白いです。


敦賀アーケードツアー(後編)に続く

案内人

谷垣奈穂
谷垣奈穂
TOURISTORE/SAVA!STOREスタッフのかたわら、ライターをしています。地元の社長さんが定期的に会社に持ってきてくれるお野菜のおかげで、毎日がヘルシーハッピーです。